平成5年度から7年度にわたり、6種類のサメ・エイ類を用いた研究成果の概要は次のとおりである。1)エナメロイド基質形成期において、その有機基質の多くを占めるのは直径20-30nmの単位膜によって囲まれたチューブ状小胞である。チューブ状小胞は象牙芽細胞の一部と連続し、発芽するように見えることから、象牙芽細胞由来と考えられる。エナメロイドの初期結晶は単位膜に囲まれ、このチューブ状小胞の中で形成されるように見える。2)エナメロイド石灰化期では多数の結晶が出現し、それらからは明瞭なアパタイトの格子像が得られる。エナメロイド基質には高電子密度線維とコラーゲン線維も存在するが、それらの結晶形成への大きな影響は認められない。3)象牙質の石灰化はエナメロイドに多くの結晶が出現した後に起こる。象牙質の有機基質の多くを占めるのはコラーゲン線維であり、象牙質では基質小胞性石灰化とコラーゲン線維性石灰化が認められた。象牙質形成期の象牙芽細胞は太い突起を象牙質中に伸ばす明調細胞と、象牙前質に接し骨芽細胞に類似した暗調細胞との二型に区分できる。4)エナメロイド石灰化期から成熟期にかけての内エナメル上皮細胞はその遠心側に糸粒体、小胞、空胞、顆粒が発達し、側壁では膜のかみ合いが顕著となる。種によっては歯胚周囲に毛細血管が発達する。この時期の歯胚上皮細胞はエナメロイド基質の分解と脱却に積極的に関与している、と考えられる。5)ALKPaseはエナメロイド石灰化期から成熟期にかけての内エナメル上皮細胞の細胞壁に強い活性が見られた。Ca^<2+>-ATPaseも種差はあるが、ALKPaseと同時期に同じ所に活性がみられた。この時期の内エナメル上皮細胞は活発な物質輸送、エナメロイドへのCa輸送に関与している、と思われる。ACPase活性には種差があり、外エナメル上皮細胞に強くでるものと、でないものがある。ACPaseが強くでる種は歯胚に発達した毛細血管が接近している。
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