本研究は、in vivoおよびin vitro両系で骨形成関連の脂質として、いわゆる基質小胞以外の脂質成分として、骨芽細胞の細胞外スペースに存在する多層膜構造物(MLS)に注目し、この構造物の細胞生物学的意義を明らかにするため形態学的検索をすすめている。 骨芽細胞の類骨側にみられるMLSは、グルタールアルデヒド固定液の中にタンニン酸を加えることで、規則的周期をもつMLSとなり、これは細胞内では油滴構造として、オスミウム酸では染色されない、飽和脂肪酸を含むことが推察された。細胞外MLSは脂肪内の脂肪滴が細胞形質膜に癒合するとともに、細胞外へ放出され、弱塩基性pH環境下で固定されている間に多層膜構造をとったものと解釈された。すなわち、弱塩基性pHで前固定したあとオスミウム酸の前にpH6.0の酸性条件下でインキュベート(25℃、2brs)すると、多層膜構造は無構造の油滴構造に変化することも確認された。以上のことから、in vitroの脂肪酸純品を用いたフリーズフラクチャー法の結果も合わせて、MLSが脂肪酸(FA)を含む構造物であることが証明された。 さて、この構造物について過ヨウ素酸-チオカルボヒドラジド-蛋白銀による多糖体染色を超薄切片上で行った。その結果、反応産物は、細胞内油滴上、とくに細胞質との界面には反応陽性を示した。さらに細胞外MLS上にも反応産物がみられた。 次に、遊離コレステロール検出のためにジギトニンをグルタールアルデヒド固定液とともに用いたところ、コレステロール・ジギトニン複合産物が細胞外MLSに一致して認められた。これらの所見はMLSが脂肪酸・遊離型コレステロールを持つ複合体で少なくとも緊密な関係にあることを示唆するものである。これらの結果を踏まえて、Caイオン検出を現在検索中である。最終報告前に行いたい。
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