研究概要 |
う蝕感受性に系統差のある2種類の無菌近交系マウスを用いて、通常飼育マウス口腔に優勢な細菌種(Enterococcus faecalis, Staphylococcus xylosus、Lactobacillus fermentum)を選択し、付着性の差を検討する実験を行ってきた。 今までにEnterococcus faecalis, Staphylococcus xylosusのそれぞれの単独あるいは混合での実験を終えている。う蝕感受性BALB/cAとう蝕抵抗性C3H/HeNは腸管内での各細菌の付着に差はないが、口腔ではBALB/cAマウスの方がいずれの細菌種も定着しやすいことが分かった。また、口腔内の各部位(舌、歯表面など)によって細菌の付着性に差が存在することが明らかになった。 今年度はLactobacillus fermentumを被検菌に選び、同様の検討をした。その結果、腸管内ではむしろC3H/HeNマウスの方が菌数が多いが、口腔では逆に少なく、BALB/cAマウスの約1/3の定着菌数であった。以上のことから、う蝕感受性の異なるマウスでは口腔内の常在細菌の定着に系統差が存在することが明らかになった。すなわち、う蝕抵抗性無菌マスの口腔内、特に歯の表面に細菌が付着しにくく、このことが通常飼育マウスの口腔内から分離される総細菌数に系統間での差を生じさせていると思われる。 また、現在、Enterococcus faecalisとStaphylococcus xylosusの混合感染でのう蝕発生頻度と程度の実験結果を解析中で、この結果からStaphylococcus xylosusがEnterococcus faecalisによるう蝕発症に与える影響を明らかにできると考えている。
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