研究概要 |
一般に異物巨細胞はACPase活性が他界。また、骨組織に出現する破骨細胞もACPase活性が高く、しかも酒石酸に対して抵抗性を示すとされている。このことから酒石酸抵抗性ACPase(TRAP)が破骨細胞のマーカーと考えられ、現在広く用いられている。しかし、我々はこれに対し多少疑問視している.そこで、ラットの皮下に埋入した種々の異物,とくに今年度はコレステリンをラットの背部皮下組織内に埋入し、それに対し出現した異物巨細胞を病理学的に検索した。その結果、コレステリンに対して出現した多核巨細胞は、多くの文献で報告されているような燐酸カルシウム系の化合物、例えばヒドロキシアパタイトなどに対する巨細胞のものとほぼ共通の細胞性格を示した。とくに免疫組織化学的に食細胞系のマーカーが陽性を示した他、組織化学的にはACPase、耐熱性のACPaseの活性がみられた。ACPaseおよび耐熱性ACPaseとともに破骨細胞のマーカーであるはずのTRAPまでも一部の細胞が陽性を示すことを明らかにした。さらに、破骨細胞のより確実なマーカーであるはずの塩化シアヌルによる処理の後にも、その発現時期が限られているもののACPase(CCAP)活性が一部において検出された。なお、これらの各種酵素反応は燐酸カルシウム系の化合物に対して出現する多核巨細胞や破骨細胞のものと比較してみると、一般的には弱いようであった。 そこで、今後はこれらの活性について埋入異物の種類を増やし、異物に対して形成される多核巨細胞成熟状態とそれに伴う酵素活性の経時的な強度変化に着目し、その染色画像を画像解析装置によって計測・統計分析しそれの強度について客観的に捉えたい。なお、TRAPやCCAPが破骨細胞の真のマーカーでないこと、さらに塩化シアヌル処理後のTRAPの有用性、最終的にはこの研究を通してこれら各種の異物巨細胞の細胞性格を明らかにすることで、各種の異物巨細胞および破骨細胞の位置づけについても考察を深めたい。
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