本研究では、ラットの移植歯胚の発育におよぼすヘテロサイクリックアミンの1つであるTrp-P-2と上皮細胞成長因子のEGFの影響を光学顕微鏡的に検索した。第1群(対照群)の移植歯胚では、1週から6週にわたって、エナメル質の形成不全がみられたものの、比較的正常に近い歯と歯周組織の形成が認められた。また、4、6週では、歯の周囲の歯原性上皮細胞は極めて小量か、あるいはほとんどみられなかった第2群(Trp-P-2群)の移植歯胚では、1週から6週にわたって、第1群よりも不規則な歯や歯周組織の形成がみられたまた、第1群と違って、2、4、6週後では、歯の周囲に歯原性角化細胞が存在し、それら細胞が歯の周囲に嚢胞を形成しているが観察された。第3群(EGF群)の移植齒胚では、第1群と同様に1週から6週にわたって、エナメル質の形成不全がみられたものの、第1群と同様に比較的正常に近い歯と歯周組織の形成が認められた。第4群(Trp-P-2+EGF群)の移植歯胚でも、第1群や第3群と同様に1週から6週にわたって、エナメル質の形成不全がみられたものの、第1群や第3群と同様に比較的正常に近い歯と歯周組織の形成が認められた。以上、本実験の結果から、ヘテロサイクリックアミンの1つであるTrp-P-2は移植歯胚では歯原性角化嚢胞の形成を引き起こし、一方、上皮細胞成長因子であるEGFはその嚢胞の形成を抑制する働きのあることが推測された。
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