研究概要 |
口腔粘膜上皮の変性や再生過程において,本来の粘膜上細胞やメルケル細胞とランゲルハンス細胞の関係,さらに特殊分化した味蕾構成細胞とこれらの細胞の関連を明らかにする目的で本研究を行ってきた。これら一連の動物実験の過程で,動物とヒトとの比較検討を行った。この過程で平成7年度は,これまで保存していた解剖実習遺体80例から摘出した舌を中心に,有郭乳頭とエブネル腺の関係について検索し,下記の様な興味有る知見得る事ができた。 1.有郭乳頭の配列状態は,これまで報告と変わりないが,特殊な形態(Sanken type:Pair type:Slit type等)を取る乳頭が正中部に多く観察さられた。 2.有郭乳頭溝面の上皮配列は,基本的に重層扁平上皮であるが,溝底面の上皮に多列線毛上皮の存在を認めた。これまで,有郭乳頭溝底面に線毛細胞の存在は,1例報告として数編見られる。しかし,今回の観察では,8割以上のヒトに,いずれかの有郭乳頭に線毛細胞が認められた。この線毛細胞の存在は,溝の深さと直接関係がなかった。 3.有郭乳頭の溝面に開口するエブネル腺は,純漿液腺とされている。ところが今回,mucicaruminやalucian blue(pH1.0 & pH2.5)の染色で,これらの染色液に強染する細胞が存在する事認めた。またエブネ半月の存在などから,混合腺として存在していることが分かった。 4.舌根部の粘液腺は,基本的に有郭乳頭の溝底面以外に独立して開口するが,舌盲孔内には,有郭乳頭が存在し,エブネル腺と舌根腺(粘液腺)が同時に開口することも分かった。 5.これらヒトのエブネル腺に見られた粘液細胞の出現や線毛細胞の関連については,加齢的変化を含めた検討は,今後さらに各年齢や各種動物において追求・確認する予定である。 6.一部は第51回解剖学会九州地方会で発表したし,第101回解剖学会総会で発表する。
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