骨吸収に関与する細胞として破骨細胞があげられ、この破骨細胞への分化、機能調節などに関する研究は、世界中で行なわれている。我々はこの破骨細胞形成を無刺激下でも支持する細胞を単離し、TMSと名付けた。このTMS細胞と脾臓細胞とを共存培養し約7日間培養すると数多くの破骨細胞が形成される。そこで本培養系を用いて破骨細胞形成に至る過程における接着分子の発現およびその役割に関し検討を行なった。昨年迄に、LFA-1とICAM-1を介した接着が、破骨細胞への分化に重要な役割をもつことを報告したが、本年度は、この破骨細胞分化の最終段階である融合(多核化)に焦点をあて検討した。この融合反応は、非常に重要な過程であり、しかも哺乳動物の細胞では発生時以外にはほとんど認められない現象であり、その意味から考えても骨代謝に特異的な現象であると思われた。そこでウィルスがTーリンパ球に感染する際の重要な接着、融合時のマンノースの役割に目を付け、破骨細胞形成過程におけるterminal mannoseの発現を調べた。その結果、融合時のみterminal mannoseが細胞膜表面上に発現し、そのterminal mannoseに特異的に結合する試薬により、融合反応が抑制されることが明らかとなった。 以上の結果は、破骨細胞の形成時に認められる細胞融合反応は、その細胞膜上のterminal mannoseをその受容体(例えばマンノース受容体)を介して行なわれており、今後、このterminal mannoseの発現機序を解明する試みを通して、新たな骨粗鬆症薬の開発にも役立つものと思われる。
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