研究目的 唾液分泌反射のメカニズムを明らかにするため、脳幹部における神経回路網の性質を電気生理学的手技により検索する。本年度は先ず、味覚-唾液反射に着目し、上唾液核(分泌中枢)と孤束核(味覚中継核)の部位と両核の連絡関係を組織化学的に検索し、電気生理学的検索のための新鮮脳薄切標本作成の指標とすることとした。次に、新鮮脳薄切標本を用いて、孤束核から上唾液核への入力様式を検索することとした。 研究成果 1.実験動物にはラットとモルモットを使用した。鼓索神経(上唾液核細胞の遠心性線維と孤束核に投射する味神経線維を含む)にHRP溶液を注入し、組織化学的(HRP法)に上唾液核と孤束核を染色した。この結果、上唾液核と孤束核を含む新鮮脳薄切標本の作製が可能であることが分った。 2.鼓索神経に蛍光色素(テトラメチルローダミン)を注入し、注入3日後に新鮮脳薄切標本を作製した。次に蛍光顕微鏡を用い、蛍光色素で標識された上唾液核神経からガラス管微小電極法またはホールセルパッチクランプ法にて記録を行った。しかし、孤束核の電気刺激に応答する上唾液核神経は未だ記録されていない。 3.この原因の一つとして、上唾液核と孤束核を連絡する線維が切片内に含まれていないことが考えられる(切片の厚さは酸素供給を考慮して300ミクロン以下とした)。また、ラットの行動学的実験(研究発表に記載)から、上唾液核と孤束核との連絡よりも下唾液核と孤束核の連絡の方が密であることが示唆されており、これも原因の一つと考えられる。
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