研究目的 唾液腺の分泌活動は自律神経系により調節されている。このメカニズムを明らかにするため、脳幹部における神経回路網の性質を電気生理学的手技により検索する。本年度は、脳幹部の新鮮薄切(スライス)標本を作製し、in vitroの状態で上唾液核細胞(副交感神経性の分泌中枢)の神経活動を分析する。また、バスアプリケーション法により、神経伝達物質などの薬理学的性質を調べる。 研究成果 1.実験動物にはラットを使用した。鼓索神経(上唾液核細胞の遠心性線維を含む)にHRP溶液を注入し、組織化学的(HRP法)に上唾液核細胞を染色した。この結果、上唾液核細胞は生後約4日めまではほぼ球形をしており、その後約10日めまでに2-5本の樹状突起を有する形態へと変化した。 2.生後約一週間のラットを使用し、鼓索神経に蛍光色素(テトラメチルロ-ダミン)を注入し、注入2日後に新鮮脳薄切標本を作製した。次に蛍光顕微鏡を用い、蛍光色素で標識された上唾液核神経からガラス管微小電極法(細胞内記録法)またはホールセルパッチクランプ法にて記録を行った。その結果、細胞内記録法では安定した神経活動は記録できなかったが、パッチクランプ法では効率良く記録することができた。 3.パッチクランプ法ではまだ充分なデータが蓄積されていないものの、上唾液核細胞はアセチルコリンに感受性が有るらしいことや、興奮状態では約20Hzの頻度でスパイク発射することなどが分った。今後は、孤束核(味覚の中継核)などとの機能的な連絡関係についても調べる必要がある。
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