研究概要 |
実験は酵素処理により調製したラット耳下腺腺房細胞を用いた。 1.細胞内Ca^<2+>拮抗薬TMB-8や細胞内Ca^<2+>キレート剤BAPTA-AMはカルバコール(CCh)による耳下腺細胞からのK^+放出を抑制した。イオノマイシン(Iono)とタプシガ-ジン(TG)の併用によりCCh刺激に匹敵するK^+放出が惹起された。Cキナーゼ活性化剤PMAはCChによるK^+放出を増強しなかった。これらの結果はCa^<2+>の動員がK^+放出の必須の細胞内シグナルであることを示している。 2.PMAはCCh刺激による[Ca^<2+>]_iの上昇を有意に抑制した。IonoやTGによる[Ca^<2+>]_iの上昇はPMAによって影響を受けなかった。PMAはCChによるイノシトールリン酸の生成を抑制した。以上の結果から、C キナーゼとムスカリン受容体(あるいはG蛋白質)との間には負のフィードバック機構が働いているものと思われる。 3.キナーゼ阻害剤スタウロスポリンは細胞内Ca^<2+>ストアの枯渇によって活性化されるCa^<2+>の流入を増強した。対照的に、プロテインホスファターゼ阻害剤であるカリクリンA、トウトマイシン、オカダ酸はCa^<2+>流入を抑制した。これらの結果はリン酸化-脱リン酸化機構が容量性Ca^<2+>流入の調節に関与していることを示唆している。 4.cAMP,cGMPのアナログやPMAはCChやTGによるCa^<2+>流入に影響を与えなかった。cAMP,cGMP,Cキナーゼは容量性Ca^<2+>流入の調節には関与していないものと思われる。 5.CChやサブスタンスPによる[Ca^<2+>]_iの上昇やイノシトールリン酸の生成は外液ATPによって強く抑制された。プリン受容体が存在しない涙腺細胞ではATPはCChによるCa^<2+>動員に全く影響を与えなかった。ラット耳下腺細胞のムスカリン受容体とプリン受容体との間にはクロストーク機構が存在するものと思われる。
|