破骨細胞の前駆細胞の特性とその分化過程を明らかにするために、まずマウスの骨髄細胞を間質細胞株PA6とリポポリサッカライドおよびデキサメサゾンの存在下で共培養して、血球系細胞のコロニーを形成させた。共培養3日目に50〜100個の未分化な血球系細胞からなるコロニーを選び、そのコロニー構成細胞を1個ずつ再びPA6細胞と7日間共培養して、その分化能を調べた。1006個の細胞のうち674個(67%)の細胞が増殖して、破骨細胞、好中球、マクロファージのいずれかまたはすべてに分化した。これら3種類の血球系細胞の可能な組合せの内で、破骨細胞と好中球の組合せだけが観察されなかったが、これ以外の組合せはすべて観察された。破骨細胞とマクロファージの組合せがもっとも高頻度(39%)で、破骨細胞のみがもっとも低頻度(0.7%)であった。個々のコロニー構成細胞の分化の結果から、最初のコロニーを形成した血球系前駆細胞は、破骨細胞、好中球、マクロファージのすべてに分化しうるもの、破骨細胞とマクロファージのみに分化しうるもの、好中球のみに分化しうるものの3種類があったと推定された。また、個々のコロニーに含まれる各種前駆細胞の構成に一定の傾向は見出されなかった。マクロファージのみに分化する前駆細胞は5〜8回分裂する能力を持っていたが、破骨細胞のみに分化する能力を持つ前駆細胞は4回以下の分裂能しか持っていなかった。これらの結果から、血球系前駆細胞の分化の過程で好中球への分化能を失った後にマクロファージと破骨細胞に分化する前駆細胞が分かれることが明らかになった。個々の前駆細胞がどのような運命をたどるかはランダムに決定されると推察される。破骨細胞は数回の分裂能しか持たない前駆細胞の増殖の結果出現した前破骨細胞の融合によって形成されると考えられる。
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