研究概要 |
口腔癌などの扁平上皮癌から分泌される高カルシウム血症因子は副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH_rP)であると最近同定された。PTH_rPはPTHと同様の作用を持つカルシウム調節ホルモンであることを研究代表者らは明らかにした。本研究ではもう一つの強い高カルシウム血症作用のある活性型ビタミンD(1,25(OH)_2D_3)との関係について検討した。 (1)20種類の口腔癌細胞株のPTH_rPmRNAの発現量についてスクリーニングを行ったところ、HSC-3(舌癌のリンパ節転移巣より採取)にPTH_rPmRNAの発現量が高く、HSC-5(上顎洞原発巣より採取)ではその発現が殆ど認められなかった。HSC-3をpositive細胞株として、またHSC-5をnegative細胞株として本研究に用いた。 (2)HSC-3におけるPTH_rP遺伝子発現に対する1,25(OH)_2D_3及び血清添加の効果を検討した。血清添加によりPTH_rPmRNAの合成量は著明に増加した。更に、血清存在下及び無添加の両者において、1,25(OH)_2D_3はPTH_rPmRNAの発現を抑制した。 (3)1,25(OH)_2D_3はPTH/PTH_rP受容体を有する腎細胞株(OK cell)において、25(OH)D_3から25(OH)D_3-26,23-lactoneの合成を強く促進した。 今後、この代謝調節に対するPTH_rPの関与を検討したい。PTH_rPの遺伝子発現量及びその合成量の調節機構と細胞の分化及び脱分化の機序を解明してゆきたい。また、PTH_rP合成と骨吸収作用との関係をcollagenase遺伝子の発現に焦点をあて検討してゆくつもりである。
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