研究概要 |
ムスカリン様,α1アドレナリンおよびsubstnace P受容体刺激に伴う細胞内カルシウムの上昇を,carbachol,epinephrineおよびsubstance Pをアゴニストとして,幼若(2週齢)・成熟(10-12週齢)および老齢(50-60週齢)のラット顎下腺を用いて検討したが,各群の間に変化は観察されなった。顎下腺および耳下腺のNa^+,K^+-ATPase活性の変化を調べた結果,成熟群と比べて幼若群の酵素活性は両唾液腺ともに低かった。老齢群では顎下腺では著しい差異は認められなかったが,耳下腺では活性の低下が認められた。耳下腺および顎下腺の免疫組織染色を行うと,本酵素の局在には違いが認められなかった。 また,顎下腺唾液分泌量ならびに顎下腺血流量の同時測定を行い,pilocarpine投与後の推移を調べた。成熟および老齢ラットでは,唾液分泌がpilocarpine投与2分後から観察され,5-10分後には分泌速度がピークに達した。この間,顎下腺重量当たりの分泌速度に,成熟群と老齢群の間で有意差は認められなかった。投与10分を過ぎると分泌速度は低下したが,成熟群に比べて老齢群では分泌速度の低下が著しく,有意差が認められた。一方,pilocarpine投与7分後迄は,成熟群・老齢群ともに唾液分泌に伴って腺血流量も上昇した。しかし,成熟群ではその後も血流量はゆるやかに上昇したのに対し,老齢群では投与7分を過ぎてから血流量が低下した。尚,幼若ラットでは唾液分泌量も極めてわずかであり,血流量の上昇も観察されなかった。 以上の結果から,細胞レベルでの受容体機能および細胞内カルシウム上昇には加齢による差異はないものの,幼若ラットでは分泌能力そのものが未発達であり,老齢ラットでは線維化が進行すると考えられる。以上の結果より,分泌機能の持続能力が低下するものと考えられた。
|