研究概要 |
S.mutansのPTS蔗糖エンザイムIIの遺伝子(scrA)発現調節機構解明のための平成6年度の研究計画は、1、ノーザン分析によるscr遺伝子群のオペロン構成の確認、2、S.mutansGS-5株のscr遺伝子群をプローブとして、他の口腔連鎖球菌の染色体に対してのサザン分析、3、既に得られているS.mutansのソルビトール変異株における変異遺伝子の解析、であった。1、については、scrKとpmiは、scrAとは独立して一つのオペロンを形成していることが証明され、それぞれのオペロンは独立して調節されていると考えられた。2、についてはS.mutansのscrA,scrK,pmi遺伝子の各々は、従来同一菌種に分類されていたS.sobrinusよりも、他菌種であるS.gordonii等の染色体とより強くハイブリダイズするという意外な興味深い結果であった。またscrA発現調節の分子機構解明のための最も重点を置いていた3、については、変異株の一つは当初クローニングを意図していたソルビトール輸送系遺伝子の変異株ではなく、ピルビン酸ギ酸リアーゼ失活変異株であることがわかり、この遺伝子はS.mutansをはじめ口腔レンサ球菌の重要な鍵酵素であるので、その遺伝子pflのクローニング及び塩基配列の決定を行った(論文投稿準備中)。S.mutansのpflは推定分子量87,531,775残基のアミノ酸をコードしており、大腸菌のpfl遺伝子とかなり高い相同性が認められた。S.mutansのpfl変異株は従来には報告されておらず、齲蝕原性を調べるための動物実験や発現の分子機構の解明のためにも大変有用な株となるのは明かである。したがって、今後は他のソルビトール変異株の解析を行い、ソルビトール輸送系遺伝子クローニングとscrA発現調節の分子機構解明を目指すとともに、S.mutansのpfl遺伝子の解析を行う。
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