研究概要 |
S.mutans PTS蔗糖エンザイムIIの遺伝子(scrA)のユニークな発現調節を明らかにするため、まずscrA遺伝子周辺の未だ機能不明のORFの解析を行った。scrA下流にはscrK遺伝子の他にホスモマンノースイソメラ-セ遺伝子pmiがこれとオペロンを形成して存在し、スクロース代謝遺伝子はscrB,scrA,scrK+pmiがそれぞれが独立に転写されていると考えられた。また、scrB下流には種々ストレスに誘発されるグルカン依存性凝集に何らかの関与をする因子をコードする興味深いds20RF3の存在が明らかになり、上流の仮想上の翻訳伸長因子遺伝子とオペロンを形成していた。このグルカン依存性凝集は従来報告されているものとは異なるメカニズムによることがわかり、予期せぬ収穫であったが、その詳細な機能の解明については今後に課題として残された。しかし、このグルカン依存性凝集に関する遺伝子をクローニングする方法を確立することができた。一方、本課題の主目的であったscrA発現に対するユニークな調節機能解明のために計画したソルビトール輸送系遺伝子のクローニングは研究期間内には果たせなかった。しかし、その過程で、S.mutansの糖代謝の鍵酵素であるピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子という予期せぬ遺伝子やS.gordoniiのグルコシルトランスフェラーゼのポジティブレギュレータ遺伝子とよく似た遺伝子などがクローニングされ、思わぬ方向へ研究が発展した。今後は他のソルビトール変移株の解析を行い、ソルビトール輸送系遺伝子クローニングとscrA発現調節の分子機構解明を目指すとともに、S.mutansのpfl遺伝子の解析を行う。
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