研究概要 |
歯周疾患の治癒過程において歯周組織の再生は(1)化学走化性因子によって細胞の遊走、(2)細胞外基質成分(ECM)上に細胞が接着し伸展,更に(3)これらの細胞が増殖し分化することによって達成されると考えられる.また歯根膜の未分化間葉系細胞がセメント芽細胞に分化することが知られていることから歯周組織の再生において歯根膜とセメント質の関係を検索することが重要である.[実験材料および方法]継代したHPLFを通常の培地でconfluentになるまで培養し,ALPase活性の上昇を確認し,分化段階になったHPLFをFCS-free,phenol red-freeのMCDB107でFCSを可及的にcell layerから除去し24時間の培養を行った。その後直ちに培養上清を遠心分離し,その上清をHPLF-CMとした.HPLF-CMを分子量3千の限界で限外濾過し,20倍に濃縮し,おおよその分子量分布を調べるためにSepharose CL-6Bを用いた.分離後CASF活性測定のために溶出溶媒は0.1mMPMSFを含むPBS(-)で展開した.HPLF-CMとSepharose CL-6Bで分離したCASF活性陽性分画をPD-10カラムで脱塩し,凍結乾燥後DEAEカラムのHPLCさらに,二次元電気泳動の試料とした.一方,S.Narayanan教授から供与されたセメント質由来のCAPに対するmonoclonal抗体を用いてWestern blotを試みた.[結果および考察]Sepharose CL-6Bで分画し,CASF活性を測定すると,5分画にその活性が認められ,明らかに50kDa以上の複数の高分子がCASFsであった.ヒトtype I collagenよりはヒトpFNに対するpolyclonal抗体との反応があり,しかもCASF活性は約65%阻害された.また,HPLF-CM中にもCAPが認められることから,CASFsを介した歯根膜のセメント質形成における関わり合いについても検索する必要性が見い出された.
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