研究概要 |
歯科領域における感覚および運動の第1次中枢である脳幹部で抑制性の作用を示す主たる神経伝達物質はGlycine(Gly)とγ-amino butyric acid(GABA)であると考えられている。これらの伝達物質受容体へのステロイドホルモンおよびその代謝産物の作用を調べるため、アフリカツメガエル卵母細胞のmRNA翻訳系を作用した。メスの成体ラット脳幹部を間脳、中脳、橋、延髄の4部位に分け、それぞれからRNAをフェノール-クロロフォルム法により抽出した。さらにoligo(dT)-cellulose chromatographyによりmRNAを分離しこれをアフリカツメガエルの卵母細胞に注入した。この2日後くらいからGlyあるいはGABAの応答が出現した。4部位いずれについても、このGABA(10μM)応答に対し、ステロイドホルモンの代謝産物、3α,21-dihydroyx-5α-pregnan-20-one(THDOC),3α-hydroxy-5α-pregnan-20-one(THP)および、これに極めて近似の構造を持つ人工誘導体でかつては麻酔の導入剤として使用されていた、3α-hydroxy-5α-pregnan-11,20-dione(alfaxalone)が10nM以上の濃度において顕著な増強作用を示すことが確かめられた。4部位いずれについても、alfaxaloneの増強作用が他2者(THP,THDOC)より強く、20倍にもおよぶ例さえあった。4部位間での増強強度差が現れる事を期待したが部位間での差は認められなかった。一方、ステロイドホルモン自体、testosterone,progesterone,estradiol等にはこの増強作用は見られず、高濃度において逆に抑制作用を示した。Gly応答に対しては、これらステロイドは増強、抑制、いずれの作用も示さなかった。
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