本研究は味細胞-味神経の細胞間シナプス形成と味細胞の受容器発現のメカニズムを明らかにするため、味覚応答特性の異なるマウス鼓索神経と舌咽神経をつなぎ変え、再生後の味応答特性の変化について検討したものである。前年度は、各種味刺激に対する再生神経の応答プロファイルを比較し、各再生神経が再生前に保有していた本来の応答特性を変わらず示す結果を得たが、最終年度の本年は、その神経依存的な発現性が最も明確にみられることが予想される受容機構である、アミロライド感受性Na受容機構の発現性について、再生神経を単一線維に分け、その単一神経線維のレベルで検討した。 コントロールマウスの単一鼓索神経及び舌咽神経線維のNa応答のアミロライドによる抑制性を調べると、鼓索神経の場合、その約50%の線維に抑制効果が認められ、その抑制率に対する神経線維数の分布はアミロライド感受型と非感受型のグループの存在により2峰性となった。一方、舌咽神経の場合は、アミロライド感受型の線維はほとんど認められず、その分布は1峰性となった。神経つなぎ変え手術3ケ月後、約50%のマウスで神経が再生しており、味刺激に対する応答が得られた。舌後部に再生した鼓索神経と、舌前部に再生した舌咽神経の単一神経線維のNa応答のアミロライドによる抑制を調べると、その抑制は再生鼓索神経線維の応答にのみ認められ、抑制率の分布は2峰性を示した。再生舌咽神経線維の抑制率の分布は1峰性であった。これらの結果から、味細胞に発現するアミロライド感受性のNa受容機構(おそらくNaチャネル)は神経依存的に発現するか、あるいはそれぞれの再生神経線維は将来その受容機構を形成する味細胞を選択してシナプス形成をおこなっていることが示唆された。。
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