ヒトの歯のEDTA抽出液中に主たるマトリックス金属酵素でわる間質コラゲナーゼ、72-kDaゼラチナーゼ/IV型コラゲナーゼおよびストロムライシン-1に対する阻害活性が存在すること、そして、それら阻害活性は抗TIMP-1モノクロナル抗体の共存で完全に抑制されることを明らかにした。さらに、この阻害活性がTIMPであることを確認する目的で、ヒトの歯のEDTA抽出液を抗TIMP-1モノクロナル抗体アフィニティーカラムで部分精製し、SDS電気泳動とイムノブロッティングを行った。EDTA抽出液は分子量28kDaの免疫反応陽性単一バンドを示し、ヒトリコンビナントTIMP-1と同一の泳動度を示した。ついで、ヒトセメント質および象牙質中におけるTIMP-1の分布をTIMP-1のワンステップサンドイッチ酵素免疫測定法とabrasive micro-sampling法を併用して明らかにした。その結果はセメント質中にTIMP-1が検出できる症例では、その濃度は表層で最も高く、セメント-象牙境に向って減少する傾向を示した。しかし、他の症例ではセメント質中にはTIMP-1はほとんど検出できなかった。これに対し、象牙質中でのTIMP-1濃度そのものには固体差があるものの、その分布は全症例で一貫しており、セメント-象牙境から象牙前質にかけて終始増加する傾向を示した。このようにして測定した象牙質中でのTIMP-1の平均濃度(54.1±18.5pg/mg±SE)はセメント質中のそれ(9.6±6.0pg/mg±SE)に比べ有意(p<0.05)に高いことが明らかとなった。現在、さらに、ヒトの歯におけるTIMP-1の局在を明らかにする目的で、抗TIMP-1モノクロナル抗体を用いた免疫組織化学的検索を行っている。
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