内定後研究方向に大きな影響を及ぼす2つの発見をした。マウスシスタチンの一次構造を明らかにするためにN末端部分配列を元にした合成DNAプローブを使ってマウス顎下腺cDNAライブラリーからシスタチンをコードするクローンのセレクションを行い、そのDNA配列を決定した。その結果はJ.D.Windassらが1984年にNucleic Acids Researchに発表したアンドロゲン非依存性mRNAの遺伝子と一致した。彼らはこのタンパク質の機能は報告しておらず、当然シスタチン活性を持つことを明らかにしていない。もう一つの発見はODUラットの唾液シスタチン量が異常に増加することである。ODUラットは歯周病ラットといわれ、通常の粉末食を与えると切歯部歯周にポケットが生じ、歯垢が蓄積することが報告されている。このラットの顎下腺唾液には野生型及び復帰型ラット唾液中の数千倍のシスタチンが存在することを明らかにした。これは交感神経刺激薬イソプロテレノールを連続投与した時に誘導される量に匹敵する。この結果歯周疾患とシスタチンとの関連が強く示唆される。現在このラットの歯周組織上及び歯肉内のシスタチンの存在様式を組織学的に検索中である。
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