研究概要 |
Bacteroides(Porphyromonas)gingivalis,Bacteroides intermedius(Prevotella intermedia)等の死菌体を油中水滴型乳剤としてモルモットの足裏に準備注射し,4週後にムラミルジペプチド(MDP)を側腹部皮内に惹起注射すると、準備注射部位に出血壊死反応を伴う強烈な炎症の再燃が生じる事を見いだした。本反応の発症機序を探るため,様々な実験を行って、次の結果を得た。1)準備注射にはグラム陰性菌と結核菌類縁菌が有効で、その他のグラム陽性菌は無効であった。2)グラム陰性菌の精製リポ多糖(LPS)やリピドAはそれ自体は準備活性を欠いていたが、菌体タンパクを多量に含むLPS標品は、強い活性を示した。3)それ自体準備活性を欠くMDPあるいは精製LPSに卵白アルブミン(OA)を添加し、準備注射部位にOAに対する遅延型過敏症を成立させると,MDP注射に応じて反応が起こった。4)MDPによる惹起注射後被験動物の血清中には高レベルの腫瘍壊死因子(TNF-alpha)やインンターロイキン(IL)-6が認められたが,これらサイトカインレベルと反応の有無とは相関しなかった。一方,反応局所のTNF-alphaレベルと反応の有無との間には一定の係わりが認められたが,MDPの代わりにリコンビナントとヒトTNF-alpha,IL-1alpha,IL-6等のサイトカインないし反応を起こした動物の血清を静脈注射ないし局所注射しても反応は起こらなかった。5)免疫抑制剤エンドキサンやFX506を前投与すると本反応は抑制された。 今後、モルモット口腔内で本反応の実験モデルを確立して、潰瘍性壊死性口内炎ないし歯肉炎の機序解明に資したいと考えている。
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