研究概要 |
本研究の目的は頭頸部由来の6種の扁平上皮癌の放射線及び制癌剤の感受性を調べ、同時に細胞内還元物質及び癌遺伝子産物及びm-RNAについて調べ、両者の関連を明らかにしようというものである。癌の治療において、治療促進及び的確な診断と放射線及び制癌剤の有効利用は必須条件である。予め個々の腫瘍組織における放射線ないしは化学療法に対する効果がわかると治療の有効利用が可能となる。放射線及び制癌剤の効果を左右する物質として、細胞内還元物質の存在が指摘されている。またごく最近、治療効果と癌遺伝子(H-ras,v-myc,v-src,c-myc等)との関連が幾つか報告されている。しかし、各報告では、いづれも1〜2種類の癌遺伝子のみについて注目し、複数の組織系が同じ頭頸部由来扁平上皮癌で、しかも、これらの細胞内還元物質及び複数の癌遺伝子を総合して調べた報告はない。本研究は、世界に先駆けこれらの研究を行うものである。本年度では、6種の頭頸部癌(扁平上皮癌株)を用い実験を行なった結果、以下のことが明らかとなった。 1.細胞内還元剤であり最近注目されているADF(ATL由来因子)の定量を行い、放射線感受性との相関を調べた結果、両者に相関は示されなかった。昨年度に行った細胞内還元剤であるグルタチオンの定量の結果を合わせて検討したが、やはり両者に相関は示されなかった。こられのことにより、細胞内還元剤と放射線感受性、特に抵抗性は相関を示さなかったことが明かとなった。 2.6種の頭頸部癌(扁平上皮癌株)を用い、細胞中の癌遺伝子(p-53)について調べた結果、最も抵抗性を示すSQ-20B株に突然変異を認めた。しかし、p-53の突然変異の有無により放射線感受性は依存しないことがわかった。 目下、6種の頭頸部癌(扁平上皮癌株)を用い、その放射線及び制がん剤に対する感受性と、調べた因子との相関を検討中である。また、平成6年度までに行った研究データを整理するとともに、さらに蓄積的研究を行っている。計画班の当初の計画はほぼ、達成されたといえる。
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