光電脈波の検出感度を向上するために、照射光および光検出器に関する検討を行った。ヒト抜去歯及びヒト末梢血に白色光を照射し、光検出器にはCdS-CdSe光導電セルを用い、可視領域における透過光スペクトラムの測定を行った。その結果、ヒト末梢血は歯に比較して、600nm以下の波長域において、波長の短縮に伴い光透過性が低下すること、および550nm付近に極値が存在することがわかった。 次いで、ヒト健全上顎中切歯に、白色光、565nmあるいは695nmに強度ピークを有するLEDを光源として用い、脈波の導出を試みた。光検出器にはCdS-CdSe光導電セル、フォトダイオードおよび光電子増倍管を用いた。その結果、565nmにピークを有するLEDと光導電セルの組み合せが有効であった。透過光スペクトラム測定の結果と併せて考察してみると、透過光光電脈波の導出のための光源としては、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとの吸光度の差は小さくとも、ヘモグロビンの吸光度の高い波長領域の光が適当あることが示唆された。フォトダイオードあるいは光電子増倍管を検出器として用いた場合に比べ、光導電セルを検出器として用いた場合は、対象とする波長領域が比較的広範囲であるため変化量を大きく検出でき、脈波導出に適していると考えられた。 更に本方法による血流観察が、特に歯根歯髄のどの範囲までの血流を反映しているのか、抜去歯を用いてシミュレーションを行った。その結果、照射及び採光部から約4mm程度根尖方向、即ちエナメルセメント境より約2mm程度根尖方向までの範囲を透過した光を、本方法によって検出できることが示唆された。
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