歯周疾患の発症、進行におけるT細胞の役割を調べる為、炎症歯肉に浸潤しているT細胞が持つ抗原受容体(TCR)とサイトカイン産生能について免疫組織学的に検索した。歯肉炎および歯周炎患者より採取した歯肉バイオプシーから凍結切片を作製し、一次抗体として抗IL-4、抗IL-6をサイトカイン検出用に、抗TCR抗体Va2、Vb5(a)、Vb5(b)、Vb5(c)、Vb6、Vb8、Vb12をT細胞レセプター検出用に用い、アルカリフォスファターゼ-抗アルカリフォスファターゼ法により発色させた。また、サイトカイン産生細胞のT細胞サブセットを調べる為に抗CD45RO抗体との二重染色も行った。その結果、IL-4はCD45ROサブセットにより産生され、歯周炎組織では歯肉炎組織に較べて有意にIL-4産生細胞の割合が高いこと、IL-6産生細胞においても統計的に有意差はなかったものの同様の傾向が示された。IL-6に関しては線維芽細胞、上皮細胞にも陽性反応が見られた。また、その他の特徴としては、IL-4産生細胞の割合が高い症例ではIL-6産生細胞の割合が低く、IL-6産生細胞の割合が高い症例ではIL-4産生細胞の割合が低いという傾向が認められた。一方T細胞レセプターの発現については個体間で多様性が見られたが全般的に、Vb5(a)、Vb5(b)、Vb5(c)、Vb6に反応するT細胞の割合が高く、歯肉炎と歯周炎を比較すると歯周炎組織においてVa2、Vb8、Vb12が有意に高いという結果がえられた。このことから、歯周炎では歯肉炎に比べてB細胞活性化サイトカインを産生するメモリーT細胞が増加しており、従って歯周炎と歯肉炎ではT細胞の認識する抗原が異なっている可能性のあることが示唆された。
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