歯周炎罹患歯肉組織中のT細胞の特性を解明する一環としてT細胞受容体(TCR)のレパートリーならびにサイトカイン産生のプロフィールを免疫組織学的に検索した。歯周炎歯肉組織は歯周外科処置時に、対照としての歯肉炎組織は歯周疾患と関係のない要抜去歯周囲から抜歯時に採取し、通法により凍結切片を作製後、アルカリフォスファターゼ-抗アルカリフォスファターゼ法によりTCRに関してはVα2、Vβ5.2-3、Vβ5.3、Vβ5.1、Vβ6.7、Vβ8、Vβ12.1遺伝子産物、サイトカインについてはIL-2、IFN-γ、IL-4、IL-6を染色、検出した。それぞれの受容体ならびにサイトカイン陽性細胞の全T細胞に対する割合を求め、各レパートリー、サイトカイン間および歯肉炎組織と歯周炎組織で比較、検討した。さらに歯周炎患者10名、歯肉炎患者2名からは末梢血も採取し、末梢血と歯肉組織でのTCRレパートリーの違いについても検討した。その結果、歯肉組織でのTCRレパートリーは個人差が大きかった。またVβ5サブファミリーとVβ6.7はいずれの症例においても他のものに比べて使用頻度が高かったが、Vα2とVβ8サブファミリー使用頻度が低い傾向が認められた。さらに歯肉組織では自己の末梢血と比較して1ないし2つのレパートリーにおいて著明に高い発現がみられ、それらはVβ5.2-3、Vβ6.7、Vβ8、Vβ12.1等であった。サイトカインに関しては歯周炎罹患組織においてIL-4、IL-6産生細胞の比率が歯肉炎に比べて有意に高かった。またそれらの部位ではB細胞:T細胞の比率とIL-4陽性細胞の割合との間に有意な相関性が見られた。これらの結果は歯肉に浸潤しているT細胞のレパートリーは末梢血からのランダムな移行により形成されるのではなく、歯肉での局所的要因によって動員される細胞や増殖に偏りが生じ、さらにそれらのT細胞はTh2タイプであることが明らかになった。
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