我々は、コンポジットレジンインレーの臨床経過観察で辺縁に露出したセメント層の摩耗が認められること、さらにin vitroで辺縁破折を起こしたコンポジットレジンインレーの辺縁封鎖性が低下することを報告し、セメントそのものの物性を改善する必要性を指摘した。フィラー含有量を増加させ物性の向上を図ったレジンセメントで合着することが改善策の1つとして考えられる。そこで本研究では、抜去牛前歯に形成した1級規格窩洞(窩縁形態-バットジョイント、直径3mm、深さ2mm)に、Bis-GMAを主要ベースモノマーとし石英バリウムガラスフィラーを60、70、74、80wt%含有する試作デュアルキュア型レジンセメント4種で合着したインレー修復歯に繰り返し衝撃荷重を負荷し、修復物の辺縁性状や辺縁封鎖性に及ぼすレジンセメントのフィラー含有量の影響を調べた。コンポジットレジンインレーはClearfil CR Inlay(クラレ社製)を用いて直接法で作製し、合着前処理は無処理ならびにK-etchant Gel→Clearfil Photo Bond(クラレ社製)処理の2群に分けた。繰り返し衝撃(重量500g、高さ2cmより自由落下)は200回、400回、600回負荷した。次いでレプリカ模型を製作してインレー辺縁やセメント層に破壊があるかどうかをSEMで観察した。さらに0.2%塩基性フクシン水溶液に24時間浸漬し、修復物中央を歯軸方向に縦断して実体顕微鏡下でインレーとセメント界面の色素漏洩度の評価を行った。 結果(1)ボンディング材使用群は、ボンディング材非使用群に比べ、セメント層の破壊、色素漏洩度ともに少なかった。(2)ボンディング材非使用群においては、荷重負荷後のセメント層の破壊に及ぼすフィラー含有量の影響は認められなかった。(3)ボンディング材使用群では、フィラー含有量が多いほど荷重負荷によるセメント層の破壊が減少する傾向が認められた。(4)色素漏洩度については、レジンセメントのフィラー含有量の違いによる差はボンディング材使用群、ボンディング材非使用群ともに認められなかった。
|