研究概要 |
ポーセレン・ラミネートベニア修復は歯髄、歯列、咬合に傷害を与えずに審美性を回復させる有用性の高い術式である。最近の報告によると支台歯の接着面全体がエナメル質の場合、ベニアは破折や脱落といった傷害が起こらないことがほぼ明らかになった。一方、象牙質が多く露出した症例ではベニアの破折や脱落が危惧され、適応から除外されている。これは、ベニアが歯質に強固に保持されていないためだと考えられる。そこで上顎中切歯を用いて、唇側歯顎部1/3のみの象牙質を露出させ、各支台歯に合わせて作製したベニアをトータルエッチングした支台歯に合着用レジンで接着させて試験片とした。2時間後各試験片に、繰り返し圧縮荷重(25時間、9万回)を負荷させた。負荷後象牙質の露出した部位のベニア表面に顕著な破折や剥離が観察された。一方、露出した象牙質に象牙質前処理剤を施した試験片の負荷後の表面には破折などの変化はみられなかった(第71回IADRで発表した)。 さらに、ベニアが破析や剥離しない理由を見つけるため、接着強度試験を行なった。ポーセレンをエッチングしたエナメル質(ヒト抜去上顎中切歯)に合着させ、2時間後の剪断による接着強さを測定した。また、エッチングした象牙質との剪断接着強さおよび2種類の象牙質前処理剤(Impervabond primer,Multipurpose primer)を用いて処理した象牙質との剪断接着強さも測定した。象牙質前処理剤を使用することで象牙質との接着強度が象牙質前処理剤を使用しない場合より大きく、エッチングしたエナメル質の場合に匹敵する程であり、これがベニアの破折を防ぐ結果となったと考えられる(第2回国際歯科材料学会議で発表した)。 以上の結果から、象牙質に象牙質前処理剤を使用することによって、ポーセレン・ラミネートベニア修復を象牙質の露出した上顎の症例に行うことが可能であることが可能であることが示唆され、適応範囲の拡大が期待できると思われる。
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