研究概要 |
歯周疾患の推移を予測し、歯周組織の破壊を最小限に防ぐために、歯周ポッケットの活動性をいち早く把握することが重要になる。そこで本研究では、臨床的に活動性を示すパラメターと歯肉溝滲出液の流出量および蛋白濃度との関係を検討し、滲出液のアミノ酸分析や、サイトカインの測定を行った。 1歯単位の歯肉溝洗浄はSkapski and Lehnerの方法の変法にて、歯周疾患患者に行い、歯肉溝滲出液の流出量はペリオトロンで測定した。歯肉溝滲出液の流出量は歯肉炎指数(Gl:Loe and Silnes)および歯肉出血指数(GBl:Ainamo and Bay)と相関し、ポッケトの測定値とは弱い相関を示した。歯肉溝滲出液の流出量と同滲出液中の蛋白濃度とは逆相関関係が認められた。歯肉溝滲出液中のlL-1β量と臨床的パラメーターおよび滲出液の流出量との間に 相関関係は認められなかった。日立高速アミノ酸自動分析器8500により、歯肉溝滲出液のアミノ酸分析を行った結果、Met,Leu,Tyr,Phe,His,Lys,Argの比率はすべての患者でほぼ一定であったが、Asp,Ser,Glu,Pro,Gly,Alaのレベルは症例により変動した。すべての症例で、ハイドロキシプロリンは実験誤差(0.001<残基/1000残基)以下のレベルであった。アミノ酸組成をRose-diagramを用いて分析した結果、ポケットの活動性の高い症例では、血清に近いパターンが認められ、初期治療が進み、症状が安定したポッケトでは、それと異なるパターンが観察された。我々の歯肉溝滲出液のアミノ酸分析による歯周疾患の活動性の診断は有用であると思われた。 さらに、線維芽細胞養系を用いた線維芽細胞の応答性に関する研究を行い、歯周組織破壊に関わる因子を検査するシステムについて検討した。今後、本システムを用いて歯肉溝滲出液中の成分が繊維性付着にどのような影響を及ぼすか検討を継続する。
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