研究課題/領域番号 |
05671628
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂井 貴子 九州大学, 歯学部, 講師 (60128022)
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研究分担者 |
河野 敬一 北海道大学, 理学研究科, 助教授 (10136492)
寺田 善博 九州大学, 歯学部, 教授 (30038898)
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キーワード | 接合上皮 / ファイブロネクチン / ラミニン / 加齢 |
研究概要 |
生後1、2、3、5、7、10、15、20、30、40、50、60、70、80週令のマウスの下顎第一臼歯の舌側歯肉接合上皮を組織学的に観察するとともに、基底膜におけるファイブロネクチンとラミニンの分布状態を蛍光抗体法および免疫電顕法により検索した。蛍光抗体法による観察の結果、抗ファイブロネクチン抗体に対しては20週齢までは歯冠側から根尖側に至る接合上皮の外側基底膜に一致して一様な反応がみられたのに対し、30週齢以降は根尖側の外側基底膜で特に強い反応をみとめた。抗ラミニン抗体に対しては、いずれの週齢においても歯冠側の外側基底膜には反応がみられたのに対し、根尖側の外側基底膜には反応がみられなかった。電顕的観察では、接合上皮の根尖側移動は20週齢すでにみられ、胞体の一部をセメント質上に伸ばしていた。外側基底膜は根尖側でしばしば不明瞭であった。根尖側に移動した接合上皮の外側基底膜と隣接する結合組織中の細線維に一致してファイブロネクチンの存在を示す粒子が密に分布していた。ラミニンは根尖側の外側基底膜に特別な曲在を示さなかった。 以上のことから、接合上皮は20週齢から根尖側への移動を開始することが確認された。ファイブロネクチンは上皮細胞の伸展や遊走を促進するといわれ、創傷治癒の過程で上皮細胞がファイブロネクチンを含むマトリックス上を伸展、移動することが報告されている。また上皮細胞はラミニンに対し正の走化性を有し、歯周疾患の際の根尖側移動はラミニンが誘導するといわれているが、反面、上皮細胞の運動性を阻害するという報告もある。今回の観察では、接合上皮の根尖側端でしばしば基底膜が不明瞭であったこと、創傷治癒過程で上皮細胞は明帯に先行するといわれていること、およびファイブロネクチンとラミニンの分布から、接合上皮の根尖側移動は上皮細胞が基底膜に先んじて直接結合組織のファイブロネクチンに接することにより進行したことが推定できた。
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