研究課題/領域番号 |
05671645
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
伴 清治 愛知学院大学, 歯学部・歯科理工学講座, 講師 (10159105)
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研究分担者 |
丸野 重雄 名古屋工業大学, 電気情報工学科, 教授 (60024204)
鶴田 昌三 愛知学院大学, 歯学部・歯科理工学講座, 講師 (40183488)
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キーワード | 歯科インプラント / リン酸カルシウム塩 / 電気化学 / コーティング / ハイドロキシアパタイト / 非晶質 |
研究概要 |
本年度はリン酸カルシウム塩が電気化学的に実験室で合成できるという現象の解明に努めた。電解液として、基本的に人細胞外液の無機塩類濃度にほぼ等しい組成の人口体液を用いることにし、電位、電解時間、電解液温度を変化して組み合わせ、種々の条件下での合成実験を行なった。試料電極表面の析出物はX線回折、赤外分光分析、走査型電子顕微鏡観察により状態分析し、原子吸光光度計により析出物中のCaおよびMgの量および吸光光度法によりPの量を分析し、析出量、組成に与える諸条件の影響を速度論的に解析した。その結果、温度が37℃より低い場合の析出物はMgを含む結晶性の低い炭酸含有リン酸カルシウム塩皮膜であり、自然骨のアパタイトと類似していた。温度が52℃ではMg(OH)_2とアパタイトが、62℃ではMg(OH)_2とCaCO_3とアパタイトが析出していた。電位が高く、電解時間が長く、電解液温度が高い場合はCaCO_3及びMg(OH)_2などのリン酸カルシウム塩以外の物質が混入していた。電解液温度を変えた場合の析出物中のCa、MgおよびP量の定量分析結果は電解時間の平方根に対してほぼ直線的な変化を示した。また、Ca、MgおよびP析出量の時間変化は温度による不連続な変化はみられなかった。すなわち、この電気化学的析出現象は拡散律速であると考えられた。さらに、電解液組成を変えた実験結果より、HPO_4を含まない液はMg(OH)_2が主成分の皮膜が生成されおり、逆にHPO_4を増量した溶液では非晶質のリン酸カルシウム塩であった。Mgを含まない溶液ではCaとPよりなる純粋のリン酸カルシウム塩であり、KおよびHCO_3の影響は小さいものと考えられた。すなわち、人体液の無機塩類にほぼ等しい組成の人工体液は、リン酸カルシウム塩をチタン基板上に電気化学的に析出させるのに適した電解液であると考えられ、液組成がその標準組成からずれるとMg(OH)_2とCaCO_3など他の結晶相が析出した。
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