平成5年度はリン酸カルシウム塩が電気化学的に実験室で合成できるという現象の解明に努めた。その結果、人工体液中ではMgを含む非晶質のCa欠損の炭酸アパタイトが生成すること、電解液の組成により生成物の形態とその生成量が大きく影響されることを見出した。さらに、Ca^<2+>とHPO^2_4イオン濃度の増加と負電極付近のpHの増加によりこの析出が生じること、またこの析出は負電極付近のこれらのイオンの拡散が律速段階であることを解明した。 平成6年度は、平成5年度で得られた知見をもとに針状の炭酸アパタイトの生成を中心に検討した。その結果、Mg^<2+>を含まない溶液を電解液として用い、電解液温度が50℃以上で針状の炭酸アパタイトがチタン基板上に析出し、20分から1時間で十分な析出量が得られることがわかった。この炭酸アパタイオの配向性は電解液温度が高いほど、電流が低いほど高くなることが明らかとなった。さらに、pH緩衝剤の添加が生成量の増加に大きな効果を有することを見出した。これらの把握した生成条件をもとに針状の炭酸アパタイトの析出を、HA-G-Ti複合材料表面およびチタン基板の生体活性化処理に応用した。HA-G-Ti複合材料およびチタン基板上に電気化学的に針状の炭酸アパタイトを生成させ、ウサギ大腿骨にインプラントし、3週間後及び9週間後に引き抜き試験を行った。その結果、両材料とも電気化学的な針状の炭酸アパタイトの生成により、初期の結合強度が有意に増加することが明らかとなった。
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