研究概要 |
精神的ストレスに対する顎関節細胞外基質の動態を知る目的で10週齢のラットに拘束ストレスを与えたものと拘束ストレスをあたえながらカルシウムの過剰投与を行ったものを比較しながら顎関節グリコサミノグリカンおよびコラーゲンの局在を組織化学的および免疫組織化学的に観察するとともに,生化学的にも分析を行った. その結果,両実験群におけるラット顎関節の細胞外マトリックスの基本的な構成は,1)関節円板,下顎頭表層および骨組織にI型コラーゲンがみられ,軟骨部ではII型コラーゲンがみられた.2)コラーゲン量は加齢にともなって増加した.3)下顎頭表層にデルマタン硫酸が,下層にコンドロイチン硫酸とケラタン硫酸が多くみられた.4)加齢にともなってヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸が減少し,デルマタン硫酸とケラタン硫酸が増加した.拘束ストレス群およびカルシウム投与ストレス群の間には特に相違はなく,正常群と比べても基本的な細胞外基質の構成はほぼ同じであったが,コラーゲン線維の微増とグリコサミノグリカンの全体量が減少した.特に関節円板と下顎頭表層における質的変化が明らかに認められた.これらの変化は,拘束ストレスが顎関節に緊張を発生させ,異常な機械的刺激となって顎関節に伝わり,細胞外基質の構造変化に発展した結果によると考えられる.また,カルシウム投与によって,精神的ストレスの諸症状が緩和するという報告があるが,この点について本研究では,拘束ストレスに対する細胞間基質の変化の検索を行ったが,ストレス授与時、カルシウムを与えたグループとそうでないグループに組織学的改善に差は認められなかった.
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