本研究は、骨粗鬆症に対するチタンインプラント体埋入が、周囲組織のグリコサミノグリカンおよびコラーゲンにどのような影響を与えるのか検索したものである。 実験動物には、3週齢より低カルシウム飼料で飼育した15週齢の骨粗鬆症モデルラットを使用した。埋入術式は、ペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射による全身麻酔を行い、左右大腿骨を露出し生理食塩水を滴下しながらラウンドバ-で皮質骨を穿孔してリ-マ-で直径1mm、深さ3mmのインプラント窩を形成し、チタンインプラント体を埋入適合させた後、縫合した。埋入後、ラットを1、3、5、10週間飼育し、実験試料に供した。検索方法は、組織化学的、免疫組織化学的および生化学的におこなった。組織化学的および免疫組織化学的結果として、チタン埋入後1週でヒアルロン酸、2週でコンドロイチン硫酸が観察された。また、3週では、デルマタン硫酸とI型コラーゲンが観察されたが、ケラタン硫酸およびII型コラーゲンは観察されなかった。生化学的結果として、チタン埋入周囲組織にヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸が検出された。ウロン酸を指標としたグリコサミノグリカン量は、埋入後2週でピークを迎え、ヒドロキシプロリンを指標としたコラーゲン量は、3週で大きく増加した。コンドロイチン硫酸は組織の石灰化に、デルマタン硫酸は線維化に関与することから、インプラント窩形成に際し、損傷した骨組織は、埋入後3週間前後をピークとした活発な骨組織の修復が行われているものと思われ、さらに、グリコサミノグリカンは、創傷治癒初期でその網状構造によりインプラント体と骨組織との界面において、細菌の侵入を阻止しているものと思われる。また、骨粗鬆症モデルラットでは体重が7%程度減少していたが、この体重の差が実験結果にどのように影響したか今後検討を要する。
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