研究概要 |
本研究は,糖尿病群や骨粗鬆症に対するチタンインプラント体埋入が,周囲組織のグリコサミノグリカンおよびコラーゲンにどのような影響を与えるのか検索したものである。 実験動物には,ストレスプトゾトシンを用いた15週齢の糖尿病ラットと3週齢より低カルシウム飼料で飼育した50週齢の骨粗鬆症ラットを使用した。埋入術式は,ペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射による全身麻酔を行い,左右大腿骨を露出し生理食塩水を滴下しながらラウンドバ-で皮質骨を穿孔してリ-マ-で直径1mm,深さ3mmのインプラント窩を形成し,チタンインプラント体を埋入適合させた後縫合した。埋入後,ラットを1,2,3,5,10週間飼育し,実験試料に供した。検索方法は,組織化学的,免疫組織化学的および生化学的におこなった。 その結果、正常ラットでは、1)インプラント埋入部の壊死,膿瘍,インプラント排出などの異常所見は認められなかった。2)埋入後2週で軽度の炎症性細胞の浸潤をともなう線維性結合組織の介在ならびに結合組織内での線維骨形成が認められた。埋入後3週では炎症性細胞の消失および新生骨形成の進行が認められた。埋入後5週では線維骨の層板化が進行し,10週ではインプラントと骨組織が直接接触していた。3)埋入後1週でヒアルロン酸がみられ,2週でコンドロイチン硫酸がみられた。さらに,3週でデルマタン硫酸が観察された。また,グリコサミノグリカン量は,2〜3週で量的にピークを迎え,その後減少した。4)周囲組織にI型コラーゲンがみられたが,II型コラーゲンはみられなかった。また,ヒドロキシプロリン量は,3および5週でピークを迎えた。糖尿病ラットでは、10%程度の壊死、膿瘍の形成がみられた。また,グリコサミノグリカンおよびコラーゲンの動態は,正常群とほぼ同程度の経過をたどったが,全体として正常ラットより1週程度の遅れがみられた。骨粗鬆症群でも,グリコサミノグリカンおよびコラーゲンの動態は,正常群とほぼ同程度の経過をたどった。
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