平成5年度、6年度の接着力の結果から、デンチンプライマー処理効果が最も優れていたのは水溶性N-(Hydroxyalkyl)acrylamide(N-HA)系モノマーの中で、分子内のメチレン鎖の短いN-methylolyacrylamide(MEAA)とN-methylolmethacrylamide(MEMA)であることが判明しので、50%MEAAと30%MEMAを含む水溶液をデンチンプライマーとして調製した。10%マレイン酸溶液および10%リン酸溶液で15秒間、または10-3溶液で10秒間酸処理した後、これらデンチンプライマーで追加処理した象牙質を被着体とした。そして、これら象牙質へのClearfil photo bondの水中浸漬1年(平成5年度に試料作製)、2年(平成6年に試料作製)後と熱衝撃(0℃【double arrow】60℃)1万回および5万回後の接着力の測定を行い、デンチンプライマー無しや35%HEMA含有デンチンプライマー処理のもとと比較し処理効果を検討した。長期水中浸漬後の接着力はいずれも水の影響をあまり受けず水中浸漬24時間後の接着力と比較しても近似しており、有意の差は認められなかった。また、接着試験後のレジン破壊面や象牙質破壊面も水中浸漬24時間後のものと類似していた。一方、熱衝撃後の接着力は水中浸漬24時間後の接着力と比較して、デンチンプライマー無しのものは有意に低下し、低下率は熱衝撃回数に比例していた。また、接着界面破壊は殆ど界面剥離であった。しかし、デンチンプライマー処理有りのものには有意の差は認められず、接着界面破壊像も水中浸漬24時間後のものと類似していた。長期水中浸漬後および熱衝撃後の接着力は総体的に50%MEAA、30%MEMA、35%HEMA処理の順に優れ、N-HA系モノマーがデンチンプライマーの成分として有効であることが判明した。
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