研究概要 |
低免疫原性のヒト癌細胞に対してその免疫原性を高め、癌ワクチンの可能性を検討することを目的に、紫外線照射、IL-2伝子の導入、あるいはIL-12遺伝子の導入等の処置を行い癌細胞の性状の変化と免疫担当細胞への影響等を免疫学的に検討し以下の結果を得た。1 紫外線照射の効果(1)新鮮分離したヒト癌細胞のMHC class-I抗原の表出が減少した。(2)培養ヒト癌細胞のMHC class-I抗原の表出は増加した。(3)飢餓状態に誘導した培養ヒト癌細胞のMHC class-I抗原の表出は新鮮分離したヒト癌細胞と同様にMHC class-I抗原の表出が減少した。(4)しかし、UV-B照射は新鮮、培養癌細胞の別に無関係に自己癌細胞に対するCTLを非照射癌細胞に比べ有為に強力に誘導した。従って、癌細胞への紫外線照射はMHC class-I抗原の表出に無関係に癌細胞が自己腫瘍細胞特異的なCTLを誘導する効果を増強することが示された。2 IL-2gene、あるいはIL-12gene遺伝子導入の効果(1)ヒト腎細胞癌にIL-2 geneを導入すると、NK-cell, LAK-cellに対する感受性が高まった。(2)また、LAK-cell誘導能が示された。(3)さらに、ヒト腎細胞癌に対するCTLの誘導に世界で初めて成功した。(4)IL-12 geneの導入で扁平上皮癌や肺小細胞癌のMHC class-Iの表出が有意に増強された。(5)NK-cellに対する感受性が両方の癌とも高まった。(6)IL-12 gene導入癌細胞で自己抹梢血単核球を刺激すると非遺伝子導入親癌細胞に対する殺細胞活性が高まることが明らかとなった。したがって、IL-2, IL-12 gene導入癌細胞は癌ワクチンとして免疫担当細胞を賦活化し抗癌免疫機構を作動させる可能性が示唆された。以上の事実から癌細胞に対する紫外線照射、IL-2, IL-12 gene導入等は癌ワクチン作成の有力な方法であることが示唆された。
|