研究概要 |
今年度は、昨年のアンケート調査結果から得られた話しにくい点を考慮し,野外調査を設定し,現在,歯科の領域で市販され用いられているマウスガードを使用し,高校ラグビ-部ならびにボクシング部を対象に,いままで使用されているマウスガードの問題点の抽出とその作成にあたり,いかに専門的配慮が必要となるのかの検討をおこなった。 対象は,高校ラグビ-部員20名とボクシング部員4名である。それぞれの対象者の研究模型を作成し,その模型をもとにGC社製マウスガードを作成装着した。富士フィルム社製プレスケールにより,非装着時の平均咬合力を同じく富士フィルム社製のオクルーザーにより計測し,その値と咬合状態,装着したマウスガードの破砕状況,そして,使用状況との関係を検討した。更に,非装着時のあ行,た行,さ行,そして,パ行を発声させるとともに装着時に同じく発声させ,その違いを検討した。ボクシング部については,従来使用していたマウスガードと,今回新たに作成したマウスガードとの違いをも検討するため,同様のアンケート調査ならびに発音についての資料を採取し比較検討を行った。 以上の検討項目から,少なくとも使用目的,即ち,衝撃から保護するのみでなく,食い縛りなどが強く作用するスポーツでは,マウスガード自体の強度もかなり必要となるとともに,この素材を決定するために,このほか,個人個人の咬合力,ならびに咬合状態も十分考慮する必要性が示された。更に,装着時の装着感の善し悪しは,口蓋側,特に最後臼歯部周縁,ならびに前歯部唇側の深さなどが強く影響し,このことは,発音にも主観的評価に基づく結果ではあるが,大きな変化をもたらすことが示された。来年度は,これらの結果をさらに客観的に検討し,個人別に,より専門的な対応の必要性の検討を続けていく予定である。
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