研究概要 |
「ヘルトビッヒ上皮鞘由来エナメル上皮細胞によるアメロジェニン産生に関する研究」 これまでの研究で、ヘルトビッヒ上皮鞘細胞は歯髄炎刺激によって、マラッセの上皮遺残様の上皮島を形成することが明らかになった。さらに、細胞性セメント質などの硬組織に接触する部分の上皮島細胞はエナメル器様に変化した。これらの上皮細胞のアメロジェニン産生能の有無を明らかにする目的で、抗ブタアメロジェニン抗体を用いて免疫組織化学染色をおこなった。その結果、ヘルトビッヒ上皮鞘由来エナメル上皮細胞にもアメロジェニン産生能があることが明らかになり、歯原性上皮細胞の潜在的な分化能が示唆された。本研究の内容は平成7年度歯科基礎医学会総会において発表し、Oral Surgery,Oral Medicine,Oral Pathology誌に掲載予定である。 「MNU徐放性局所投与による歯原性腫瘍発生実験」 歯科用アルギン酸印象材とMNUの混和物をラット下顎骨面上に注入したところ、5ヶ月後より臼歯部マラッセの上皮遺残細胞の増殖性変化が観察された。この増殖物は周囲歯槽骨を吸収しており、腫瘍性の性格を有すると考えられた。またエナメル器様の形態を示し、アメロブラストーマと類似していた。本研究は、これまでの報告と比較して以下の様な特徴があった。1切歯ではなく有根歯である臼歯に発生したので、より人の歯原性腫瘍に類似した実験モデルである。2今回の研究によりはじめてマラッセの上皮遺残が歯原性腫瘍の発生母細胞のひとつであることが確認できた。3腫瘍発生率はほぼ100%であり再現性が高い。 「人アメロプラストーマ細胞と歯との共培養」 本実験では歯原性上皮細胞が歯原性硬組織との接触によって形態学的変化を示すか否かを検討した。アメロブラストーマ細胞は培養皿上で敷石状に配列したが、歯原性硬組織との接触でも形態的変化はなかった。おそらく数カ月の接触期間が必要であると考えられるが、培養細胞の生存期間は約1ヶ月であり、長期生存が本研究の問題点と考えられる。
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