研究概要 |
昨年度より口腔外科疾患や手術に関連する睡眠呼吸障害の発生状況を検討するために,通常の睡眠ポリグラフィーができない小児や術後患者でも容易に睡眠呼吸検査を行える睡眠オキシメトリー法を開発し,第22回日歯麻総会のフォーラムで報告した.この検査の測定項目で90%時間比(睡眠中のSpO2が90%未満の比率)はアプノモニターやスリ-プトレースの無呼吸(低換気)指数と強い相関があった.そこで,肥満,慢性的ないびき,扁桃肥大のない呼吸機能,鼻腔通気度ともに正常な10例より同検査法の正常値を導いた((例)90%時間比は0.004±0.008%).本年度はこの検査法を用いて口腔外科関連の睡眠呼吸障害の発生を調査したところ,口腔外科疾患では下顎後退症,クルゾン症候群,ピエールロバン症候群に,手術等では下顎後退術,口蓋形成術,顎間固定術に高頻度で閉塞型の睡眠呼吸障害が見つかり,詳細を第39回日口外総会で報告した.一方,このような疾患等の気道閉塞のメカニズムを探るために咽頭気道の形態分析を行った.形態分析には基礎研究にて撮影法を確立した咽頭造影側方セファログラムを用いた.因に同法で撮影した安静呼気位での正常値は平均咽頭気道径は15.5±2.9mm,軟口蓋長(過剰量)は34.8±3.7(7.7±3.7)mm,上顎骨舌骨間距離は63.8±6.4mmである.そして,睡眠呼吸障害の治療対象となった25例で睡眠呼吸障害の重症度と咽頭気道形態の8項目の多変量解析を行い,軟口蓋の過剰,気道狭窄,舌下垂が気道障害の主因と解明した.さらに(無呼吸低換気指数)=1.48×(軟口蓋過剰量)-2.63×(平均咽頭気道径)+32.6という予測式を得てスクリーニングや手術適応の決定に応用し,この予測に従って顎関節破壊に起因する睡眠呼吸障害に対して人工顎関節を開発して欧米には類を見ない新しい手術法を第14回睡眠障害研究会に報告した.
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