ベンゾジアゼピン系薬剤であるミダゾラムを健康成人男子に0.075mg/kg静脈内投与して、深い鎮静状態である5分後(以下5分群)または効果が消失始める30分後(以下30分群)に拮抗薬であるフルマゼニルを0.5mg静脈内投与して、平衡機能検査、覚醒状態、血圧、脈拍数、呼吸数を経時的に測定した。平衡機能検査として1.重心動揺計による検査2.重心円盤テスト3.起立検査(単脚起立検査、マンテスト)を行ない、ミダゾラム投与前のデータと比較検討した。実験は両群とも7例ずつ行なった。その結果、フルマゼニル0.5mgの静脈内投与により両群とも全症例鎮静状態から覚醒した。また、平衡機能検査は、 1.重心動揺計による検査では、5分群はフルマゼニル投与90分の時点まで、また、30分群ではフルマゼニル投与60分まで機能障害がみられた症例があった。 2.重心円盤テストでは、5分群はフルマゼニル投与から90分の時点、30分群ではフルマゼニル投与後30分まで機能障害の認められた症例数があった。 3.ミダゾラム投与前と比較するとマンテスト、単脚直立検査とも、5分群はフルマゼニル投与から90分の時点まで、また30分群ではフルマゼニル投与から60分後の時点まで機能障害の認められた症例があった。 フルマゼニル投与により血圧、脈拍数、呼吸数の有意な変化は認められず、また、副作用も認められなかった。 以上、ミダゾラム0.075mg/kgの静脈内投与による深い鎮静状態の時に、フルマゼニル0.5mg投与で覚醒させた場合は、フルゼニル投与後少なくとも90分間、また、ミダゾラムの効果が消失し始める頃に同量のフルマゼニルの投与で覚醒させた場合は60分間の観察が必要で、帰宅には責任ある成人の付き添いが必要であると考える。
|