口腔癌における腫瘍関連抗原発現の解析とその臨床応用に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05671671
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 辻 龍雄 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (70144954)
• 研究分担者: 佐々木 功典 山口大学, 医学部, 教授 (80116722)
• キーワード: Immunohistochemistry / FISH / p53 / PCNA / DNA ploidy / oral tumor

研究概要

(1)細胞外基質tenascinの発現様式を扁平上皮癌40例、唾液腺腫瘍40例で検討した結果、炎症や組織修復に伴って発現しており、従来の説のように癌組織に特異的な存在ではないことを報告した。[日本口腔外科学会雑誌]
(2)悪性唾液腺腫瘍101例で23.8%、良性唾液腺腫瘍60例で1.7%がp53蛋白陽性であり、PCNA陽性症例においてp53蛋白は有意に陽性(p=0.0074)であることを報告した.[Oncology Reports]
(3)唾液腺腫瘍45症例においてp53蛋白の免疫組織学的発現を検討したところ、p53蛋白陽性腫瘍周辺の正常細胞の細胞質に陽性を呈し、p53蛋白陰性症例では発現していなかったことから、p53蛋白の細胞質内発現は腫瘍化との関連が示唆されることを報告した。[Journal of Oral Pathology and Medicine]
(4)50例の扁平上皮癌、14例の白板症、11例の多形性腺腫を対象としてp53蛋白とPCNAの発現、DNA polidy patternの測定を行った。PCNA標識率は良性病変よりも扁平上皮癌において高値を示しており、p53標識率は喫煙者で高値であった。DNA polidy patternとPCNA標識率、P53標識率との間に相関性はなかった。p53陽性患者のPCNA標識率(52.3%)は、p53陰性患者(35.7%)よりも高値であった。p53陰性患者の予後は陽性患者よりも有意によいことを報告した。[International Journal of Oral and Maxillofacial Surgery]
(5)11例の腺様嚢胞癌、8例の多形性腺腫、3例のリンパ節を対象として、3番17番染色体の数的異常の有無をFISH法を用いて検討した。染色体の数的異常は、腫瘍においてみられ、良性の多形性腺腫よりも悪性の腺様嚢胞癌において高率にみられた。さらに、17番染色体のmonosomyは、唾液腺腫瘍に特異的である可能性があることを報告した。[Journal of Oral Pathology and Medicine]
(6)白板症28例と扁平上皮癌15例で、PCNAとAgNORsは増殖能の有用な指標として用いることができ、PCNAは白板症の悪性化の予測因子であることを報告した。[Oncology Reports]
(7)扁平上皮癌27例、腺様嚢胞癌13例、多形性腺腫10例、リンパ節5例を対象として、3番17番染色体の数的異常の有無をFISH法を用いて検討した。17番染色体のmonosomyは、扁平上皮癌よりも有意に良性および悪性の唾液線腫瘍において高率に発現しており、唾液線腫瘍に特異的な現象であることを報告した。[Oral Oncology]

研究成果

• [文献書誌] 辻,龍雄: "唾液腺腫瘍と扁平上皮癌におけるtenascinの発現について" 日本口腔外科学会雑誌. 41. 15-18 (1995)
• [文献書誌] Shumin Wen: "Immunohistochmical detection of p53 protein and proliferating cell nuclear antigen (PCNA) in salivary gland tumors." Oncology Reports. 2. 233-236 (1995)
• [文献書誌] Xinwei Li: "Cytoplasmic expression of p53 protein and its morphological features in salivary gland lesions." Journal of Oral Pathology and Medicine. 24. 201-205 (1995)
• [文献書誌] Tatsuo Tsuji: "The significance of PCNA and p53 protein in some oral tumors." International J.of Oral & Maxillofacial Surgery. 24. 221-225 (1995)
• [文献書誌] Xinwei Li: "A fluorescence in situ hybridization (FISH) analysis with centromere-spesific DNA probes of chromosome 3 and 17 in pleomorphic adenoma and adenoid cystic carcinoma." Journal of Oral Pathology and Medicine. 24. 398-401 (1995)
• [文献書誌] Akihiro Kanekawa: "The estimation of proliferating activity by PCNA and AgNORs in leukoplakia and squamous cell carcinoma of the oral cavity." Oncology Reports. 2. 711-715 (1995)
• [文献書誌] Akihiro Kanekawa: "Oral Oncology,Vol.IV Fundamental" Interphase cytogenetic study of chromosome 3 and 17 detected by FISH in oral tumors., 380 (1995)