研究概要 |
(1)口腔扁平苔癬における浸潤Tリンパ球は、主にT細胞レセプターα/β鎖を有するCD4,CD45RO,CD29陽性のMHCクラスII拘束性の“メモリー"型Tリンパ球であった。また,比較的多くのCD8細胞が基底細胞直下にみられ,CD45RA,LAM-1陽性“ナイーブ型"Tリンパ球も認められた。γ/δ型Tリンパ球は認められなかった。 (2)Tリンパ球はCD_2,CD11a,ICAM-1分子を高頻度に発現しており,Tリンパ球相互及び上皮細胞との接着およびシグナル伝達に関与し,本症の特徴とされる上皮下のリンパ球の密な集合に関連するものと思われた。 (3)Tリンパ球は,VLA-3,-4,-5分子を発現しており,Tリンパ球の局所への移入及び細胞間基質中の移動及び持続性の活性化に関連するものと思われた。 (4)早期活性化抗原分子CD25,CD69分子の発現は少数のリンパ球に認められた。このことは本症が慢性化した段階では局所に集合しているリンパ球が活発に増殖したり、サイトカイン産生を行っていないことを示唆した。 (5)上皮内リンパ球は上皮下に浸潤するリンパ球と表面分子発現においては特徴的な違いは認められなかった。これらの細胞が上皮内に浸潤していくのが何らかの分子によって決定される特異的リンパ球サブセットであるのか或いは基底膜をたまたま破壊したリンパ球による偶然の現象なのか、基底細胞破壊の機序を含めて今後の課題である。
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