1.日常生活におけるR‐R間隔変動について まず初めに23〜27歳の健康な成人男女8名に24時間ホルター心電図を装着して日常生活におけるR‐R間隔変動について検索した。検索時点は、就寝、睡眠中、起床、食事、運動、運転で、それぞれの行動を起こした1分間の平均心拍数、最大R‐R間隔、平均R‐R間隔、最小R‐R間隔、R‐R変動率を測定した。平均心拍数が最も少なかったのは睡眠中で、変動率も小さかった。最も変動率が小さかったのは運動であったが、心拍数は多かった。最も変動率が大きかったのは起床時の13.1%で次いで運転の11.3%であった。これらから、日常生活において、R‐R間隔は、心拍数が少ない時、体位が大きく変換する時、緊張を強いられる時などに影響を受けやすいことが示唆された。 2.非日常的な緊張時のR‐R間隔変動について 全身麻酔をかける26〜28歳の麻酔医3名についても上記と同様の方法でR‐R間隔を測定した。平均心拍数は、静脈路確保、患者手術室入室、気管内挿管の順に多く、変動率もこの順に大きかった。しかし、気管内挿管時の心拍数は、運動中より多く、107回/分であったが、その変動率は運動中より小さく3.9%であった。このことから、緊張していても、心拍数が105回/分以上である場合は、変動率はあまり影響を受けないと思われた。 3.歯科治療時のR‐R変動について (1)局所麻酔の影響について 浸潤麻酔と伝達麻酔を比較してみると、平均心拍数は64〜68回/分とほとんど差がなかったが、変動率は伝達麻酔注射の方が大きかった。また注射終了後気分の悪くなったもののR‐R間隔は最大4656msecと延長し、変動率も16.8%と本研究中最も大きかった。 (2)歯科治療の影響について 歯科治療前に、胸痛があった時点では心拍数も115回/分と多かったが変動率も12.0%と大きかった。ユニットに座るときも心拍数、変動率ともに大きかった。 以上のことから、歯科治療は、種々のストレスの中で最も大きなものであることが示唆された。また、R‐R間隔を測定することから、種々のストレスの定量化が可能であると思われた。
|