1.組織適合抗原の明らかな2系の近交系ラットを用いて、同種保存骨の抗原性を検索した。二次皮膚片移植法では焼成、オートクレイブ、完全脱灰、凍結乾燥、凍結、部分脱灰、脱脂の順に抗原性が低かった。しかし、同種保存骨の抗原性については、二次皮膚片移植法では移植部位が皮下つまり異所性であるので、同所性骨移植とは免疫反応も異なると考えられた。そこで、免疫学的検索として、補体依存性細胞傷害試験(液性免疫)、そしてMitogen反応およびリンパ球混合培養(細胞性免疫)を追加したところ、二次皮膚片移植法からほぼ同様の結果であった。 2.既に著者が報告した方法に加えて、高速液体クロマトグラフィーでより純化した牛骨骨形成因子およびI型アテロコラーゲンを精製し、これらを用いて、牛骨由来骨形成因子添加骨代用材を作製することにより、再現性が良く優れた骨誘導能を有することが可能となった。リコンビナントBMPを用いた骨誘導実験に関する諸家の報告よりも骨誘導能が高かった。 3.ラット同種保存骨と牛骨由来骨形成因子添加骨代用材とを併用した移植片をラットの腹部筋肉内に埋入したところ、移植後4週では完全脱灰同種保存骨を用いたものが骨誘導能においては優れていたけれども、力学的特性においては凍結乾燥同種保存骨を用いたものが優れていた。 4.ラット同種保存骨と牛骨由来骨形成因子添加骨代用材とを併用したところ、骨誘導能においては完全脱灰同種保存骨が、そして力学的特性においては凍結乾燥同種保存骨を用いたものが優れていた。したがって、この両者が今後の実験の対象と考え、現在、両者に自家骨髄を併用した場合の実験を遂行中である。その後、ラット同種保存顎骨を作製し、辺縁切除や区域切除などの各種の顎骨欠損部に移植し、骨誘導能、力学的特性、周囲軟部組織の反応に関して検索する予定である。
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