研究概要 |
ras p21蛋白に対する免疫組織学的検索では形態学的に正常な口腔粘膜上皮では反応が無いかあってもごくわずかであったのに対して、扁平上皮癌以外のOral epithelialではいずれの症例においても〓細胞層および錯角化層に陽性反応を認めた。口腔扁平上皮癌14例では全例において陽性反応を認め、そのうち9例では近接する非癌部上皮と比較してより強い反応を示した。このことより癌組織においてras p21蛋白の発現の亢進が考えられた。遺伝子変異に関してはH-ras geneのcodon12を含むPCR productについてMsp Iを用いたRFLPs(Restriction frabment length polymorphisms)により検索したところ14例中3例で未消化断片が認められ、点突然変異が考えられた。しかし、K-ras geneのcodon12,13を含むPCR productについてのDirect sequence法による検索では変異は認められなかった。唾液腺腫瘍においてはいずれの症例においても腫瘍細胞にras p21蛋白に対する強い反応を認め、K-ras geneのcodon12,13を含むPCR productについての温度勾配電気泳動法(TGGE)による検索から多形性腺腫12例中4例で点突然変異が考えられた。EGFRおよびc-erbB-2 proteinについては現在検索中であるが、EGFRは扁平上皮癌で、c-erbB-2 proteinは唾液腺腫瘍においてそれらの発現が高まる傾向にある結果が得られつつある。これらをコードするc-erbB-1 gene およびc-erbB-2 geneの増幅についても検索中であるが、病状把握、予後の判定など臨床応用を模索するためにはさらに症例を増やし、現在行なっているTGGEおよびSSCP(一本鎖高次構造多型)ゲル電気泳動法による遺伝子変異のスクリーニングも併せさらに詳細な検討が必要と思われる。
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