研究概要 |
本年度は、摘出イヌ腸間膜動脈および静脈を用い、以下の観点から揮発性麻酔薬の効果を薬理学的に検討した。すなわち、(1)経壁的電気刺激による刺激頻度依存性の収縮反応におよぼす影響。(2)tyramine(Tyr)の累積的投与による用量反応曲線におよぼす影響。(3)norepinephrine(NE)の累積的投与による用量反応曲線におよぼす影響。これらの結果から揮発性麻酔薬のアドレナリン作動性血管平滑筋収縮機構におよぼす作用メカニズムを麻酔薬理学的に考察した。方法;雌雄雑種成犬より上腸間膜動脈および静脈を摘出し、周囲の結合組織を除去した後、外径(2.5〜4.0mm)のリング標本を作成した。95%O_2,5%CO_2の混合ガスで通気した20mlのKrebs-Ringer液(37℃,pH7.4)で満たしたorgan bath中に懸垂した。90分間安定させた後実験を開始した。薬物(NE, Tyr)の適用は、organ bath内に累積的に行い、これに対する血管反応を観察した。等尺性の張力変化は、リング標本上端に連結したforce transducer(日本光電,TB-612)およびamplifier(日本光電、AP601G)を介してrecorder(日本光電、PJ-681G)上に記録した。経壁的電気刺激(ES)は、電気刺激装置(日本光電、SEN-3201)を用い、9V,2msec. の矩形波で、1〜32Hzの頻度で行った。揮発性麻酔薬の適用は、各々専用の気化器に前述混合ガスを300ml/minの流量で、実験開始30分前よりorgan bath内に持続的に投与した。結果;1.動脈ではハロタンによるES収縮の抑制はみられなかったが、静脈では4〜32Hzにおける収縮反応が、1,2MACによって抑制された。イソフルラン(2MAC)は、動脈で16Hzにおける収縮反応を抑制した。静脈では、イソフルラン1MACは、32Hz、2MACは、16,32Hzにおける収縮反応を抑制した。セボフルランは、動脈では動脈ではESによる収縮反応を抑制しなかったが、静脈では、16,32Hzにおける収縮反応を抑制した。2.ハロタン、イソフルラン、セボフルランは、動脈および静脈のTyrによる収縮反応を抑制しなかった。3.ハロタン(2MAC)は動脈において、NEによる最大収縮を抑制した。静脈では、ハロタン(1,2MAC)は、NEのよる最大収縮反応を抑制した。イソフルランは、動脈のNE収縮に対して抑制効果を示さなかったが、静脈ではNEによる最大収縮反応が、1,2MACにより抑制された。セボフルランは、動脈静脈ともNE収縮に対して抑制効果を示さなかった。
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