研究概要 |
in vitroにおける腫瘍細胞上のICAM-1分子の発現ならびにサイトカインによるICAM-1分子の発現の変化について IFN-〓がin vitroにおいて腫瘍細胞上のICAM-1分子の発現増強に与える影響ついて検討を行った。実験に用いた腫瘍細胞はKB細胞(ヒト鼻咽腔癌)、SKO細胞(ヒト卵巣癌)である。IFN-〓の両細胞におよぼす直接的効果(細胞毒性)について検討したところ、IFN-〓の濃度が50U/ml,100U/mlでは細胞増殖率になんら影響を与えないが、500U/mlでは対照群(無添加)に比べ細胞増殖率の低下が認められた。次にIFN-〓が両細胞上のICAM-1分子発現におよぼす影響について検討を行った。両細胞は自然の状態で細胞表面にICAM-1分子を発現していることが確認された。IFN-〓の各種濃度および添加後の経時的な細胞表面のICAM-1分子の発現の変化を観察したところ、両細胞とも100U/ml添加24時間後には細胞表面のICAM-1分子の発現は増強していた。発現増強効果は72時間後も認められたが、増強率は24時間後が最大であり以降経時的に低下していた。またその発現増強効果はIFN-〓の濃度依存性が認められた。SKO細胞はKB細胞に比べ発現の程度は大きかった。 口腔癌局所におけるICAM-1分子の発現について 口腔癌組織のICAM-1分子の発現を手術時に切除した組織をABC法による免疫組織化学的染色により検討したところ、ICAM-1分子の発現は癌組織に比べ癌周囲ま間質にその発現が強く認められた。 当初研究に用いる腫瘍細胞はK-562,Daudi細胞であったが、どちらもリンパ系腫瘍細胞であり申請者らが臨床で取り扱う腫瘍はほとんどが扁平上皮癌であるためKB細胞ならびにSKO細胞に変更し研究を行った。 IFN-〓により腫瘍細胞上のICAM-1分子の発現増強が可能であることが確認でき、その発現増強はIFN-〓添加24時間で成され、その後発現率の低下はみられるが72時間後までは増強効果のあること、さらにその増強はIFN-〓濃度依存性であること、またその発現は腫瘍細胞の種類により異なることが確認された。 ヒトの口腔癌組織におけるICAM-1分子の発現が癌組織に比べ癌周囲の間質に強く認められたことが何を意味するのかを検討していくことも本研究を臨床応用するためには重要と思われた。
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