研究概要 |
広島市内全保健所(8保健所)において,平成6年2〜4月に妊娠の届出をした妊婦1,468名を対象とした。歯周保健に関する日常の行動や歯科保健についての認識レベルを評価する質問紙(HU-DBI)に,歯科に対する不安や悩み,さらに歯科保健に対する意識やニーズなどを加えた質問紙を作成し,妊娠初期ならびに出産後4か月期,9か月期に郵送法による調査を実施した。 その結果,すべての時期で質問紙の回答が得られた者についてみてみると,母親の歯科保健行動のレベルは時期を追って徐々に高くなっていた。また,母親が関心をもっているものとして1番にあげた割合が最も高かったのは,妊娠初期では「出産や育児」であったが,4か月期,9か月期ではともに「お子さんの健康」であった。関心をもっているものとして「歯と歯ぐき」を上位にあげた者は,すべての時期でわずかであった。 次に,お子さんの歯について関心をもっているものとして1番にあげた割合が最も高かったのは,妊娠初期では「むし歯」であったが,4か月期では「はえてくる時期」,9か月期では「むし歯」と「歯ならび」であった。また,歯に関する情報の入手方法については,「育児書」をあげた者はすべての時期で多かったが,出産を境に「育児書」から「友人や近所の人」へと変化する傾向が伺えた。 以上より,母親は出産や子どもの歯牙萌出を境として,歯科保健行動や歯科保健に対する考え方などが変化することが示唆された。現在,出産後1歳6か月期における質問紙調査を行い,その回答状況について分析するとともに,歯科保健指導プログラムを作成するために,これまでの結果を踏まえて多面的な分析を行う予定である。
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