研究概要 |
矯正力に対する歯周組織の反応は組織学的あるいは組織化学的に検討されており若年者における反応が早いことが知られている。矯正力に対する反応は歯周組織に分布する微小循環系の反応と密接な関係にあると言われている。 ヒト歯肉における微小循環の動態をレーザー血流計(バイオメディカル社)を用いて計測し,歯の変位の計測はキーエンス社製渦電流センサー(AH-303)を用いた。 上顎中切歯間に空隙をもち,歯肉に発赤,腫脹などの臨床的炎症症状を示さない被検者の中切歯と犬歯間の遊離歯肉と付着歯肉および歯槽粘膜部の血流変化をADコンバータ(MacLab/2e,ADInstruments)を介してマイクロコンピュータに入力記録した。 歯の変位と血流変化について 歯の変位と血流の減少率との相関係数(R)はいずれの個体でも0.6以上の高い値を示した。 若年者,成人それぞれに与えた歯の変位というストレスは同程度であったが,それに対する若年者の歯肉血流の減少が著明であった。このことからも若年者では、歯の変位に伴って血流は反応性に富んだ変化を示すことが示唆された。 安静時の歯肉各部の血流波形 入力した血流変化の電気信号の周波数分析を行なった結果,遊離歯肉では心拍に一致したピークと低い周波数(vasomotion)が見られた。一方,歯槽粘膜では心拍に一致したピークは顕著ではなかった。 現在,歯肉の炎症と血流の変化および,矯正治療中の患者についてはデータを採得中である。
|