研究概要 |
著者らが以前の研究により抽出した歯肉炎の進行予測に役立つ可能性のある菌叢パターンと病態変化との関連性を追究するために,この菌叢パターンを有する歯肉炎の被験者の選択を行った。 20歳前後の成人36名について1歯を被験部位とし,被験部位の歯肉炎症指数(GI),ポケットの深さ(PD)および出血の有無(BI)を測定した。さらに6本のペーパーポイントを用い歯肉縁下プラークを採取し,1mlのprereduced anaerobically sterilized Ringer's solutionにて菌の懸濁液を調製した。菌の懸濁液を10倍連続希釈し,希釈液0.1mlをTrypticase Soy血液寒天培地ならびにEikenella corrodensの選択培地に塗抹接種した。同時に,位相差顕微鏡による菌の形態別計測を行ない,運動性桿菌の比率も算出した。 その結果,被験歯にGIが1以上の歯肉炎を有する者24名が抽出された。さらに,歯肉炎の進行予測に役立つ可能性のある菌叢パターンの大きな特徴であったE.corrodensの有無により2群に分けた。即ち,E.corrodensの有無の基準としては,以前の研究においてE.corrodensがほとんど認められなかった群の平均値である0.1%以下の場合をE.corrodensが存在しない群,E.corrodensが高かった群の平均値である0.5%以上の場合をE.corrodensが存在する群とした。この基準により,E.corrodensの存在しない者8名および存在する者13名が被験者として選択された。以前の研究成果と同様に,これら2群間にはGI,PDおよびBI値には有意差はなく,歯肉炎の炎症状態には差がないことが確認された。今後は,これら2群の経年的な病態変化を追跡調査する予定である。
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